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「デザインの現場」美術出版社/2006年12月号 記事抜粋 特集/エキスパートに聞く ジャンル別デザインのポイント

「デザインの現場/美術出版社」2006年12月号記事、
写真共原本のままに使わさせていただきました。
これからも皆様にお喜び頂けますよう一生懸命頑張ります。 望水社員一同

旅館のブランディング
過去と未来をつなぐ旅館のグラフィック/desc 福田 大

 私ども「望水」のグラフィックツール及び新たなるCIを構築していただいたdesc(デスク)福田様が、数あるデザイン関係誌の中でも著名な「デザインの現場(美術出版社)」さんより取材を受け、福田様のデザインに対する熱き思い、また私どものグラフィックツール制作・完成に至るまでをご紹介をいただきました。  福田様には公私にわたりお世話になっておりまして、自他共に認めるMac好き。時にはビジネスパートナーとして、また時にはディープなMac談義に花を咲かせたりと、仕事の枠を越えたお付き合いに。そう、昔からの友人だったような錯覚すら覚えてしまいます。そして、伊豆ー東京と距離を感じさせないリズミカルなディスカッションは、Webカメラを通しながら、毎日のように行われております。もちろん!Appleの「iChat」で。。。



福田は、そんなパンフレットが象徴する旅館のステレオタイプなコンセプトに当時から疑問を抱き、コストに影響ない範囲内で改良に努めてきた。「例えば、従来は"施設"が中心であったのに対し、旅館で過ごす"シーン"を意識するなど、実際の印象や時間の流れを尊重したいと考えてきました。今では、宿の詳細な情報はインターネットで得られるようになったので、パンフレットは予約のための判断材料というよりも、宿のイメージングツールという役目に変わりつつあるのではないでしょうか」



 個人客を大切にする旅館が増えてきたという時代の変化もあり、現在は改めてパンフレット以外のグラフィックも広く見直しながら、旅館のイメージをトータルにつくり上げるデザインが可能になったという福田。2004年から手がけている東伊豆の旅館「望水」でも、グラフィックツールを中心としたブランディングを行っている。CIから着手し、毎年1カ所ずつ施設をリニューアルするタイミングに合わせ、館内のサイン類や備品に至る細部のデザインを現在も進行中だ。 「箸袋やメモ類などはすべて消耗品ですから、加工は従来の業者さんにそのままお願いして仕入れ単価を据え置くなどの工夫をします。でも、パンフレットや案内状、封筒などシビアな印刷コントロールが必要なものは私が責任を持って完成させ、納品することにしています。」郵送費の問題から画一的だったパンフレットのサイズも、宅配業者によるメール便の登場で、各宿のイメージから自由に発想できるようになった。 「しかし、急にすべてを変えてしまっては、それまでの旅館の歴史を否定することにもなりかねません。世襲制であり、過去と未来をつなぐ存在となるオーナーの考えを汲み取ることも必要です。望水ではその思いを、CIに女将さん直筆の書を使うことで表しました。」



 また、旅館のデザインでは、オーナーとのコミュニケーションも重要課題の一つだ。「一般的に旅館では、オーナーが一国の主であるため、周囲のスタッフはノーといいづらい環境の中で意外に孤独な場合が多いのです。私はできるだけ率直に思ったことをいいます。デザインを行う環境づくりのためには、最初から紙や印刷の話をするのではなく、相手に伝わる言葉でデザインの有用性を説明し、出入りの業者ではなく、パートナーだと実感してもらえる努力を惜しまないことが大切だと思っています」

ロゴの色指定や館内での展開方法を記したCIマニュアル。上記のグラフィック類のほか、館内のサインや送迎バスなどの立体物にも展開される ゴシック体も候補にあったロゴ案。先鋭的であるよりも過去と未来をつなぐ意味をもたせ、創設期を支えた女将さんの書を採用した



福田 大/ふくだ だい
アートディレクター1967年生まれ。広告代理店を経て98年に独立。
連絡先=desc 東京都目黒区上目黒2-15-4 マスダビル203 〒153-0051
TEL.03-5725-2725
 http://www.desc.jp/